日本人性とは何か

外大S先生より
「海外にいて感じる日本人性とは何か」というお題をいただきましたので
ちょっと思いついた話を書きます。
とりとめのない長文ですので、お時間のあるときにお読みください。

先日エドモントンの日本語補習校にて運動会があり
私は得点係になりました。
得点係は各競技の終わりに順番毎の点数を集計する係です。
かなり面倒な仕事なので訳の分かっていない新参者の私が当たったようです。
得点係は私の他にもう一人女性の方がいて佐藤さん(仮)といいました。
当日は二人とも忙しくしていました。
そのうち、佐藤さんが忙しくなったので彼女が使っていたボードとペンを
そのまま引き継いで仕事を続けました。
無事運動会が終了し、集計の仕事もうまくいきました。

と、次の補習校の日、佐藤さんより
「お貸ししましたペンはどこにありますか?」と聞かれ
一瞬何のことか分からなかったのですが
運動会の日に使っていたペンが佐藤さんの個人的なものであることが分かりました。
私はてっきり本部のものだと思っていたので
「本部の机の上に戻しましたので、私は持っていません」と答えました。
佐藤さんは「あ。だったらいいですよ。実は来月にカナダを離れることになったので聞いてみたんです」とのことでした。

私はなんだか悪い気持ちがして「本部に聞いてみますね」
と言ってその場を離れました。
その後運動会の役員の方に事情を説明したところ
「運動会の物品は市中のストレージ・サービス(貸し物置)に
預けてあるのでここにはないんですよ。ペンですか。あるかなぁ」と
「できたらペンを探しに行きたいのですが」と申し入れたところ
「僕らは面倒なので行きませんが、お一人でよろしければどうぞ。
でも倉庫内は物がいっぱいで探すのは大変ですよ」と言われ
そのストレージの場所と入り口のパスワードと物置の鍵を受け取りました。
地図のとおり車を走らせ現地に到着したところ巨大な倉庫がありました。

IMG_2868

倉庫のドアには重厚な鍵がかけられていました。

IMG_2873

役員さんのお話のとおり中は物であふれていました。

IMG_2875

(これは手強いな)と思いつつ、片っ端からありそうな場所を探していきました。ただ、物があふれてはいましたが、だいたいの段ボール箱には手書きのラベルが貼ってあり、その中に「運動会関係物品」と書いてあるものを20分ぐらいあちこちを物色した後に見つけました。その中によれよれのティッシュ箱があり、そこに例のペンはありました。黒いPILOTのペンでした。

IMG_2877

そして、最後の補習校登校となる日に
無事そのペンを佐藤さんの手に返すことができました。

これが出来事の全てです。
さて、これが日本人性と何の関係が?という感じですが
とても日本人的だなぁと思ったことが、2つありました。

1つめは
「運動会の日に本部の机の上に放置したペン1本がきちんとあるべき場所に保管されていたこと」
これカナダだったらどうでしょう。他の国だったらどうでしょうね。外の行事で誰の物とも知れぬペン1本が机の上にあった場合、たいていは捨てられていると思います。絶対に「ティッシュ箱」の中には戻されず、見つけることは不可能だったでしょう。また、使用済みの空き箱を細かい物品を整理するためにリサイクルすることは、日本人として共有できる感覚です。こちらに来て思うことは、物を大切にしないなぁ、ということですね。学校の廊下や外によく北米で生産されている黄色い鉛筆が落ちている。それも短いのではなく長いのが。それを「もったいない」と思うのが日本人です。

2つめは
「ペン1本の借りを申し訳ないと思う心性」
たとえペン1本であっても他人との間での「貸し借り」に鋭敏な感覚。
これは日本人的なのではないでしょうか。「恩」の感覚です。

「もったいない」と「恩」。
この2つの心性を多くの日本人が共有しているからこそ
あのペン1本を見つけることができたのだと思います。
「もったいない」がなかったらペンはその場で捨てられていたでしょうし
「恩」を感じなければペンを探す気にもならなかったことと思います。
故に、この出来事はとても日本的だなぁと思った訳です。